紙 二 重 作
いくら親父と話してもらちがあかなかったので、
「親父!18になった俺が、男と男の話でこれだけ言っているのに"信用できないのか"」と啖呵を切った.
すると親父はおまえがそこまで言うならと
「判った!母さん、すぐ下宿用の敷金を用意しなさい」とあっさり騙された?
当時、遊びたい盛りの私は、友達や後輩がアパート住まいに刺激され、彼女を作っての同棲・麻雀三昧などの一人住まいに夢を膨らませていたのでした.
最大の難関は親父で「学校の寮では友達がうるさくて勉強できない」と大ウソ論陣を張って攻め立てたが、攻略は難しくなかなか落ちなかった.
そこで、最後の決め台詞「男と男の話」核ミサイルを持ち出して攻略成功となった。
目出度く、一人住まいを開始して、生活費は親の仕送りと蕎麦屋の出前持ちをアルバイトでまかなった.
ところが予定通り?麻雀三昧で仲間の溜まり部屋となり、後期中間の成績も急降下爆撃機で最下位ラインに落ちた.
1ヶ月もしないうちに両親はすぐ担任に呼び出された.
そして、担任は「みんな寮がうるさくて勉強できないんですよ、と言って下宿やアパート住まいをねだるんらしいですよ」とばらしていた.
オマケに「このままでは留年ですよと脅した」
そこで親父は、しばらくしてあること発動した.私はというと、相変わらずノンビリとしていた.
期待していた、同棲する彼女も出来無いので、もうすぐ学年の期末テストだと言うのに仲間と麻雀をしていた.
その時
「ブウー、ブルルッ」聞きなれた車の音がアパート前に止まる音がした.
「…もしかして」
数日前、家に電話をしたときお袋が
…「お父さんがね、期末テストが近いのでおまえが食事や洗濯に時間を取られるといけないので、あたしに行け!って言うんだよ、あたしは嫌だっていったんだけど『森川家の総力を挙げておまえを進級させる』と言って聞かないんだよ」
その話が閃いた.
私はすぐさま麻雀をやっていないAに「どんな車だ」と外の様子を見させて報告させた.
「白い車だよ」Aの報告を聞くと
「よし、みんなテーブルごと麻雀パイを持て!」
「俺が、合図したら屋根伝いに隣の馬渕の部屋に移動しろ!」
『バタン、・・・トントントン』
「いまだ!いけ!」
『ガラガラ・・・メリッ、メリッ・・・・ガラガラ』
「今日は」
「あれっ!お母さん、何!どうしたの〜」
用件を知っているくせに2階の階段を上がってくるおふくろを出迎え、入り口で時間稼ぎをする私、
「お父さんがね・・・」(電話と同じ内容)
「ああ、そうかいそれだったら丁度良かった、期末試験が近いので勉強会を開いて教えっこしようと仲間が隣にきているんだよね」
「お袋が来てくれたんだったら丁度いいやあ!、呼んできて紹介するから、みんなの分飯作ってくれよ〜」
すっかり良い子に戻っている私は窓から隣の部屋のみんなに声をかけて呼んだ
「今日は、A〜Dです」「隣の馬渕です」
…完全犯罪ということを判らない奴らは無用心にも2階の屋根から戻ってきたが、お袋には判るはずもなく、夕食時にはなくなっていたコタツのテーブルまでもひそかに戻していた私でした.(こんなにうまくいったのは事前情報として、万が一のために麻雀をしながら仲間にもその話はしていたからでした)
すっかり安心して、勉強を良くしていると思ったお袋は翌日にはいなくなっていました.
その後、親の信頼と努力を裏切ることなく、麻雀と勉強を交互に繰り返した私は、進級をかけた期末テストで、点数不足を見事先生廻り(人徳で教務主事・ドイツ語を見方にし、約束で英語、レポートで応用力学をクリア)をして進級を果たしました.
この進級をかけた先生廻りはまた後述としましょう。
なにわともあれ、『ガサ入れ』の急襲を見事外した学生時代の私でした。
みなさん、調子の良い息子にはご用心ください.
PS、「おまえが息子で良かった」
「俺もあなたが親父でよかった」
20年後には本心で親父にそう言わした、言い合った孝行息子でした.…これは真面です.
作…2002,1,11
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