先日の郵便四課の再編合理化により、入局(53.10)
以来七回目の班替えとなった。もう憤れっ子になったと言え
ばウソになるが、旧知の吉川先輩とも一諸になりひと安心配
(新語)であった。その予感はすぐ的中する事になった。
班替え後、しばらくたった十六勤宿直で古川先輩と顔を合すと
「おい、森山、明日の宿明は久しぷりに親睦を兼ねて半チャ
ンニ回ほどやるか」
「ええ、そうですね」
簡単にOKしてしまったが、内心まずい事になったと思った。
何故なら、麻雀は面子が揃わないと出来ない訳だから、年中
誘われるメンバーに入ってしまうことになる。しかも、この古
川先輩は動員(酒飲み・パチンコ・麻雀・スポーツ)の鬼と呼ば
れ、断われることを知らない?(断わらせない)のである。
昔、後輩二人をお茶に誘い、喫茶店の隣の雀荘で、麻雀を教
えながらお茶を飲ませたという話はあまりにも有名である。な
どと考えているうちに、寝ぼけ眼の宿明けとなり、いざ雀荘へ
出発〜
しかし、皆さんよく考えて見て下さい。宿り明けとはいえ朝
の九時半からやっている雀荘があるでしょうか。まあ、千葉
市内を見廻してもそうはないでしょう。たぷんないでしょう。
でも雀荘で麻雀をやるのです。そう、そのやる気が引き起し
たのが本編なのです。

さあさあ、本編スタート、郵便局を出発した。気乗りのし
ない三人とやる気満々の古川先輩一行が先輩なじみの雀荘
「華」に到着致しました。もちろん先頭は古川先輩、その古
川さんドアを開けようとして、
「あれっ、開いてない、おかしいなあ、いつもは開いている
のに」
「昨日、徹マンでもしたんじゃないですか」
と私が言い終えると同時に、再びドアに手をやりわずかに
空いたドアのすき間から、
「おばちゃん俺だよ、開けてくれ〜」と何度も叫んだが、反
応がないと見るとドアをいやと言うはど「ガタピシッ、ガタ
ピシッ」とやり、ドアのガラスが割れそうになるほど力を入
れて衝撃波と大声を送るのであった。それでも駄目と知ると
雀荘の前の道路に飛ぴ出し、(雀荘は二階、入口は一階)
二階の雀荘目がけて「おばちゃん〜」とやっている。
この辺で近くにいた私達三人は、やや距離を取る事にした。
これに気がついた古川先輩は、私達三人に近づいてきて、
「いつもだったら、開いてるんだけどよ」
「古川さん、そんなに無理してやらなくてもいいですよ」と
私が弱々しく言うと、
「そういうもんじゃないよ、森山」と一括されてしまった。
そして、今度は電話戦術で起こすと言って、さっさと電話
をかけに行ってしまった。
しばらくすると、二階の雀荘から電話のベルがリーン・リ
リン・リーンリリン・リーンリリン、何んと五分以上も鳴ら
しでいるのである。
…ん〜何という根性だろう、私達残された三人もはとほと感
心してしまった。

そして、私も遂に観念して、こう語っていた。
「さっき、ドアを壊さんばかりにしていたのが信長で、電話
戦術に切替えたのが秀吉ですよ、
『開かぬなら、壊してしまえ、雀荘』が信長、
『開かぬなら、開けて見せよう、雀荘』が秀吉だから、
『開かぬなら、開くまで待とう、雀荘』の家康も出てくるね」
案の定、五分以上の呼び出しコールから戻って来た吉川先輩
は、
「いつも十時頃になると掃除のおばちゃんがカギを開けに来
るから、その辺でお茶でも飲もう」
さすがに皆んなで顔合せて笑ってしまった。
そしてオマケに喫茶店では、雀荘のおばちゃんが出るまで、
電話の受話器を置きっぱなし、かけっぱなしコールでとうと
う徹マン明けのおばちゃんを起こしてしまいました。
一同、最敬礼!!
さて、麻雀の結果はどうだったかって、あんたあ、『信長・
秀吉・家康』に雑兵が勝てる訳ないでしょ、人間意気込みが
大事なんですね。いや〜安い授業料でした。