下の子が小さい頃のことだ。
『お母さん、きのうの夜、おふとんのなかでお父さんに叱ら
れていたの、それともケンカしていたの・・だって、お母さん
泣いていたみたい・・でも、ぼく、おじいちゃん達にはだまっ
ていてあげるからね」
そう言った、子供の勘違いに、お母さんは慌てて
「××ちゃんは、本当にいい子ね、皆に黙っててくれるなら
オモチャを買ってあげましょう」
そうして、事なきを得たと言うことである。
(*良い子の皆さん、お母さんは布団の中で泣いていたわけで
はないのです、わかりますね・・いや、鳴いていたのかも)
<<小学校三年 弟編>>
日曜の朝、私と妻は、気だるい感覚を感じていた。また、不
思議なことに?二人とも裸で寝ていた。
そんな心地良いMSの余韻(モーニング・サービス、マド・サド
でもないよ…)を吹き飛ばすように、そのことは突然やってきた。 *MS(モーニングセックス)
階段を『ドッドッドッー』と上がってくる音がした。
妻も私も、「××」だと口々に叫んだ!(下の子はよくおじ
いちゃんと下の部屋で寝るのだが、時々母親のぬくもりが恋
しくなるらしく、早起きして、二度寝にくるのである)
…そんな、解説してる間もなく、妻と私は狼狽しきってい
た。そして、混乱する頭の中で考えた。
『服を着るべきか、いやおそらく間に合わない…だが隣の部
屋に入れば、そのすきに服が着れる』(日曜の朝は、隣のテレ
ビの部屋で朝起ファミコンするときもある)
『エィ』隣の部屋に入るように念じたが…ドッドッドットン
バタン…ガラッ
妻「あ〜ん、やっぱり来た」
子「お母さん、一緒に寝てもいい」
妻「だめっ、絶対に入ってきちゃだめだからね」そういつて、妻
はしっかりと布団をガードして、頭を亀のように布団の中に隠
したのだった。妻のピシャリとした拒絶に子供は驚いた様子だ
ったが、態勢を立て直すと、私を目標にしたようでこちらにに
じり寄ってくるのである。
子「お父さん、一緒に寝よ」
『ピンチ』絶対絶命!『おっそうだ…ひらめいた…これだ』
私は、肩口の毛布をしっかりガートーすると、スッポンのよう
に首を伸ばしこう言った。
父「××、新聞を取ってきてくれないか」
子「いやです〜」(この親不孝者め)
父「頼むよ〜 お父さんの願い!」
…×× しばし、考え込み
子「あの…あの…言いにくいことなんですけど…怒らずにきいて
くれる」
ええい、早く言わんか、その辺をキョロキョロされてでもし
たら脱いだパジャマが見つかってまずいじゃないか。と焦って
いたが平静を装って(人との交渉もこれが大事ですよね)
××にやさしく尋ねた。
父「なんだい、言ってごらん」
子「もしかして、それって、ただなんですか」
(我が家では、風呂入れ・布団敷き・その他のお手伝いは、み
んな一回五十円なのであるが、新聞取りは初めてなので確認し
たかったらしい。…しっかりした子である)
父「よし、百円あげるから、行ってきなさい」
子「百円じゃいやだ」
父「じゃ、二百円」
子「いやだ」
シェーこいつ、足元見やがって…いや正確には布団の下の裸か
な、この期に及んで、金に糸目はつけられないと覚悟を決めた。
父「いくらなら行くんだ」
子「四百円ください」
(この金額を聞いたとき、子供の強気の原因がわかった。今、
××は金遣いが荒く、小遣いを貰うとすぐ使ってしまい借金
生活さえ送っているのである。確か、何か買うのに四百円い
るといっていたな…よし!)
父「××君、普通のお手伝いは、一回五十円なんだよ、仕方が
ない今日だけ特別三百円だよ、あとはまたお手伝いをして貰
いなさい。だめなら頼まないけど」(冷や汗!ハッタリ)
子「はいっ、行ってきます」…トントンダッダッダー、やった
やったー大成功。
妻「パパ、何やってんの早くしないと××が戻ってくるわよ」
何と妻はすでに着替え始めていた。私も大急ぎで着替えを済
ますと…やがて、××が新聞を持ってきた。
父「ありがとう××君、今日は三百円だけど次からは五十円だ
からね、わかったね」
…ハッハッハッ、服さえ着てしまえば余裕余裕、しかし、私
は本当に偉い、あの危機的状況の中で、よくぞ百円値切った
ものだ…ん…ん、子供を甘やかして、欲しい金額を全部やる
など教育的見地からも間違っているなどと悦に入ってしまっ
た。
<<中学校1年 兄編>>
何、兄編まであるのかって、あんたらいつもそうなのかって、たまたまですよ、たまたまね、まあ、私も飽きたので手抜きで書くけどね、
兄ちゃんが突然寝室に入ってきたのはね、将棋の森安九段が長男に刺殺される数日前の事だったと記憶している。
私の妻は教育熱心で、家庭学習の『ポピー』ってのをやらせているんですよ、それもマンツーマンでね、一日一ページとかいって、毎日八時になると半強制的に勉強部屋に連れていって、1〜2時間必ずやらせるんです。
当然子供だってストレスがたまるんですよね。それが爆発したのが運悪く、夜中の夫婦の時間だったわけですよ。
参考までにちょっとだけ様子を再現するとね、その時、兄ちゃんは何やら大声でわめきながら、いきなり、寝室の戸を開けたわけですよ。
兄「お母さん、残ってたポピーやっといたよ、今すぐ、丸つ
けしなかったら、もう、一生勉強しないからね!etc」
妻「… … … 」
残念ながら妻はその態勢(教えてあげないよ)と裸のため顔
も出せなかったのである。でも、このときは『弟編』から、
そんなに経っていなかったので、私も予感がして上半身だ
けはパジャマを着ていたので、堂々と上半身を起こして対
応しましたよ。
父「こんなに夜遅くに勉強なんかする必要はない、そんなこ
とは明日やりなさい、今日はもう夜遅いからもう寝なさい」
まったく、両方?の息子の怒りを納めるのは大変でしたよ。
まあ、そんな訳で、私は森安さんのようにはならなかった
し、夫婦の秘め事もばれなかったので、めでたし、愛でた
しでした。
「でも、世の中の教育ママさん、少しは反省しましょうね。
また、これを見て少し笑った皆さん・呆れた貴方、あなただって、少しは子供に見つかった経験があるでしょ、今度はあなたの告白をお待ちしております」
作 …1995年、冬