2002年の『ほのぼの童話大賞』に応募した作品です.(^-^)

  



 

「ジリリーーン、ジリリーーン」
めざまし時計がうるさくなっても、まあ君には
『朝ですよ〜おきてください〜』
 今朝は、そんなふうに聞こえました。
「ありがとう!めざまし時計さん」
まあ君はめざまし時計にお礼を言うと元気よく起きました。
とっても気持のよい朝です。
「まあ君、ごはんですよ〜」
ママが下から呼んでいます。
 さっそく、ママとパパとまあ君で朝食です。
今日の朝食は、まあ君の好きな目玉焼きに、ちょっぴりきらいな野菜のサラダです。
 …でも、まあ君が言いました。
「ママ、ぼくの大好きな目玉焼きありがとう!野菜はきらいだけど、チャレンジするからね〜」
 ママもパパも目玉が目玉焼きより大きくなるくらいビックリです。
だって、今日のまあ君はとっても元気で明るい良い子なのです。
いつもだったら「まだ、眠い!」とか「サラダきらい!」とか、かならずママとパパに文句をいっていたのです。

 それが小学校に出かけるときも、ママが
「まあ君、車に気をつけて行くのよ〜」
というと
「ママ、心配してくれてありがとう!ちゃんと気をつけて行ってきます〜」  ママは思わずまあ君のおでこに手をやると 「ん〜熱はないみたいね〜」
 でもでも、まあ君の『ありがとう!』は、まだまだつづくのです。
家のまえで、同級生のケンちゃんに合うと
「おはよう、ケンちゃんいつも迎えにきてくれてありがとう!」
 ケンちゃんもビックリです。
「あれっ〜まあ君、なにかきゅうにやさしくなったみたい、何かヘんだよ」
 小学校に行っても同じです。
宿題を忘れて、しかられても
「先生、いつもしかってくれてありがとう!今度は宿題を忘れない、りっぱな人になります」先生もビックリです。
ところが、学校が終わり下校になると、いつものまあ君にもどっていました。
「おい、ケン!でれでれしているとおいて行くぞ!」
「あれ、いつものまあ君だ!」
ケンちゃんが言いました。
まあ君は、あわてて口をおさえると、ポケットからガムを一枚取って食べました。
 すると、昨日と同じように口中に甘い香りがただよって、胸のあたりが『ほわっ』とあたたかくなりました。
「ケンちゃん、ありがとう!あわてなくていいよ〜今日もいっしょに帰ろう」

 そうなのです。
まあ君の食べたガムは魔法のガムで『ありがとう!ガム』って言うのです。  きのう、ひげを生やして背中に小さな羽根のあるおじいさんから、もらったのです。
家のまえで、このおじいさんが苦しそうに
「水を・・・水を一杯、おくれ・・・」
 と言うので、まあ君がおじいちゃんに水を持っていってあげると
「ふ〜助かった、薬を飲む水がなくて、こまっておったのじゃ、ありがとう!」
「そうだ、お礼にこのガムを上げよう」
「いいかい、このガムは
『ありがとう!ガム』と言って、愛の魔法がかかっているのじゃ!
自分の思っていることがやさしい心で
『ありがとう!』って言えるのじゃ、だからこのガムを食べると不思議と幸せな気持になるのじゃよ」
「ただし、効きめは一枚につき、二十四時間、一日限りじゃよ」
 たしかにガムを食べると、なんだか胸のあたりが暖かくなり『やさしい言葉でありがとう』が出てきます。
 そして、それを聞いたまわりのみんなもやさしくなったような気がしました。
  でも、何日かすると、そんなすてきな『ありがとう!ガム』も全部なくなってしまいました。
 まあ君はちょっぴり残念でした。
でも、ガムのなくなったつぎの朝も
「おはよう〜まあ君、朝ですよ〜おきて〜」
今日はめざまし時計のかわりにママがやさしくおこしてくれました。
 まあ君は胸のあたりに『ほわっ』とあたたかいものを感じると
「おはよう〜ママ、やさしくおこしてくれてありがとう!」
 まあ君はママに笑顔でほほえみました。
 あれれっ、ガムがなくても言えたみたいですね
『ありがとう!』
 どうやら愛の魔法がかかったみたいです。
 
           紙 二重 作 …2002.8



・・・感謝をテーマにしようと思いました.出来が今一なので『天使のおやつ』も作りました。(^-^)


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