昔、昔、村のふもとのお山に大きな椎の木と大きなどんぐりの木が並んでたっていました.
椎の木とどんぐりの木は小さい時から隣同士で仲良く育ってきました.
ところが大きくなった最近ではケンカばかりです.
「俺の方が背が高いぞ!」とどんぐりが言えば
椎の木も負けずに
「身体はおいらの方が大きいんだ、このやせぽちぃ!」
そういって、大きく伸びた枝をゆすってみせました。
頭に来たどんぐりは上からひっぱたきました.
さあ、大変二人とも葉っぱを揺らして大ゲンカです.
とうとう大事な子供達まで木から落としてしまいました.
木から落ちてしまった椎の実とどんぐりの実はコロコロとお山を下ります.
コロコロどこまでまでも下ります.
そして、やまのふもとまで来て『ドスン』『トスン』とやっと停まりました.
「あ〜目がまわった」
「だいじょうぶかい?どんぐり君」
「だいじょうぶ・・だいじょうぶだよ!椎の実君、ところでここはどこなんだろう」
「わからないけど、お山じゃないことは確かだね!だってたくさん木がないもん」
「なんだか寂しいね・・・」…二人はそうつぶやきました.
そういうと、疲れていたふたりは枯葉をフトンですやすやお休みです.
朝になるとガラガラという音がして
『ノッシ!ノッシ!』と誰かが近づいてきます.
二人は枯葉の陰でブルブル震えていると、初めてみる大きな物は赤い口を開けて言いました.
「夕べは山の木がザワザワとうるさくて眠れなかったなぁ、このところ毎日じゃないか!よし、あんな木なんか切ってやる」
こうして、大きな物はギザギザ光るものを持って『ノッシ!ノッシ!』と山へ出かけていきました.
しばらくして、山の上で「ドッド〜ン」「ドッサ〜ン」と二つの木が倒れる音がしました.
…椎の実とどんぐりの実には、その音が何の音か良くわかりました.
山でケンカしていたお父さん達が倒れた音です.
二人は泣きながらいいました。
「お父さんが死んじゃった・・・」
「お父さんが・・・」
椎の木とどんぐりの木は毎日ケンカしてうるさいので人間に切られてしまったのです。
「ウッウッ、ぼくたちはお父さんたち見たいにケンカしないで仲良くしようね、グスン」
「うん、そうだね、グスン」
椎の実君とどんぐり君は泣きながらそう約束すると、枯葉をフトンに小枝を枕にして、また眠りました.
次の朝になると、また、ガラガラと音がしました。
でも、今度は小さくて可愛い声とやさしい声です.
そして、近づいてきて、こう言いました.
「あっ、ここに椎の実とどんぐりの実があるよお母さん」
「あら、ほんとだわ、お庭に植えてあげましょう」
そういって、椎の実君とどんぐり君は庭の隅と隅に植えられました.
ビックリしたのは二人です.
枯葉のフトンも小枝の枕もありません。
真っ暗の土の中で何も見えません.
「お〜い、どんぐり君どこいるの〜」怖くて、心配で椎の実君が叫びました.
すると向こう側でも、
「お〜い、ここだよ椎の実君〜」とかすかに聞こえます.
二人ともお互いの声がもっと聞きたくて、一生懸命背伸びをしました.
すると、ようやく土の中から小さな芽が出ました.
先に芽を出した椎の実君が言いました.
「どんぐり君、どんぐり君、早く芽を出しなのよ、お陽様さんが見えるよ」
するとしばらくして、もうひとつ芽がにょきっと出で来ました.
「あっ、椎の実君だ、良かった〜」
それから二人はお互いを励ましあい、早くお父さん達のように大きくなろうと誓いました.
そして、ケンカは絶対にしないと約束しました.
こうして、二人はずんずん大きくなり、椎の実君は立派な椎の木に、どんぐり君は立派などんぐりの木になりました.
そして、今では庭の隅と隅で
「カサコソ」 「カサカサ」
「コソカサ」 「サワサワ」
と二人で仲良くお話しをしているとの事です.
・・・おしまい
紙 二重 作…1987年頃原作(2002.8編集)