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『天使のおやつ』
とてもあつい日の午後でした。
マア君がうら山で美味しそうにアイスを食べていると、お空から白い鳥のようなものが下りて近づいてきました。
よく見ると、白い洋服をきた子どもで、背中に羽根が生えていました。
『もしかして、天使なのかなあ?』
マア君が、ぽか〜んとしていると
「ねえ〜君、いいものを食べているね!
ぼく、お空を飛んで女神様のところへお使いに行くところなんだけど、お陽様が熱くて熱くて体が焼けそうなんだ!」
「ぼくにそのアイスをくれないかな〜」
マア君は天使がおねがいするので、アイスをあげました。
すると天使は、あっという間にアイスを食べてしまいました。
「あ〜美味しかった!元気が出てきたよ」
「そうだ、お礼にぼくのおやつを上げるね『にこにこアメ』に『勇気チョコレート』それに『ありがとうガム』みんな上げるよ」
天使はマア君におやつをわたすと
「アイスごちそう様、ありがとう!」
そう言って、また空に飛んでいってしまいました。
ふしぎな出来事に、まだ、ぽかーんとしていているマア君でしたが、手にはアイスのかわりに、たしかに三つのおやつがありました。
でも、天使の言ったことは本当なのでしょうか?そこで、マア君は実験をすることにしました。
さいしょは、いつもぷんぷんしているママに『にこにこアメ』をあげると?
あらふしぎ、ママはニコニコ笑顔のすてきなママに変身しました。
次は、いつも物音にビクビクしている弱虫猫のエルに『勇気チョコレート』を食べさせると?
エルはすくっと立ち上がり、となりの大きな犬の前に行って、平気な顔であくびをしています。
「すごい!すごいぞエル!」
マア君は思わず声を出してエルをほめていました。
さて、さいごの『ありがとうガム』はパパに食べてもらうと?
パパはすぐにママの所へ行って
「ママ、いつもありがとう!疲れていないかい〜」
「今日のお弁当は美味しかったよ、ママありがとう!」
「えっ、お風呂はすぐ入れるの、ありがとう〜ママ」
パパはありがとうの連発です。
それを聞いている、ママのニコニコ顔も本当に幸せそうです。
さすがに、天使のおやつだとマア君は思いました。
そこで、今度は、いよいよ自分が食べて見ることにしました。
『よし、こんなにすごいおやつなら三ついっしょに食べちゃおう!』
そして、こんなふうに思いました。
『…えっへへ、もしかして、明日はクラスのヒーローになっているかも?』
ところが、ところが、三つをいっしょに食べて小学校に行くと大変なことになってしまいました。
宿題を忘れて先生にしかられても、ニコニコ顔なので
「マア君、ちゃんと反省しているの!」
先生には大目玉をもらってしまいました。
友達とふざけっこで叩かれても「ありがとう」と言ってしまうので、また叩かれてしまいます。
オマケに
「明日やる避難訓練で、三階の特設脱出シューターからおりてくれる勇気のある人いないかなぁ?」
先生がそう言うと、マア君は高いところが一番の苦手なのに、手がかってに上がってしまいます。
「そうか、マア君がやってくれるのか、たのむぞ〜」
本当はいやなのに顔はニコニコして
「先生、たのんでくれてありがとう!」
って、口がかってに言うのです。
もう、マア君はニコニコ顔で、泣くしかありませんでした。
そんな時、お空の上では天使さんが、こんなふうにつぶやいていました。
「あっ、いけない、おやつの食べ方を説明するの忘れちゃった!」
「あのおやつは、目的にあわせて一つずつ食べればいいのだけど、いっしょに食べるとコントロール不能になるんだよね〜」
「あの子、大丈夫かな・・?」
…そういう事だったんだね、マア君!
天使のおやつは食べ方に気をつけようね!
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