王様は家来をあつめると言いました。
「今日こそは、あの山の麓にかかる虹をつかまえてまいれ、それーいけ!」
もう、これで何回目になるでしょうか。
王様は空に虹が出るたびに家来に命令します。
でも、まだ一度も成功していません。
最初のときは、家来のなかで一番足が早い者が虹に向かって走りましたが、いくら追かけても虹は逃げてしまい、近づくことができ
ませんでした。
そして、そのうち『フッ』と消えてしまうのでした。
2回目のときは、力自慢の家来が虹のかかる麓にまちぶせをして、虹をひっぱりましたが、いくらひっぱってもピクリとも動きませんでした。
3回目のときば、クジラをつかまえるような大きな網で何度も空をすくいましたが、だめでした。
さすがに家来たちも
「もう、だめだ」ど弱音を言い始めました。
でも、王様どうしても、あきらめきれません.
どうしてかというと、夢に出てきた偉いご先祖様が『虹をつかまえて、病気のお姫様に見せれば、たちまち元気になって、国も栄える』と言ったからです。
そこで、今度は国中におふれを出しました。
『虹をつかまえで来た者には、褒美をとらせる・・・王様』
すると何日かして、とっても天気のよい日のことです。金魚鉢をもった若者がお城の前にあらわれて言いました。
「おいら、虹をつかまえたよ」
みんな、ビックリです。
若者の言うとおり
に金魚鉢を太陽にかざすと?確かに水しか入っていない金魚鉢の中に小さな虹が見えます。

王様も飛んできて、さっそく見てみました。
「ふぅむ、確かに虹じゃ、だが、どうしでこんなに小さいのじゃ!」王様は不満そうに言いました。
そして
「こんなに小さな虹でも、姫は元気になってくれるかのう?」王様は病気のお姫様のことを若者に話しました。
「わかった、おいらにまかせておきなよ、おいらの言うとおりにしてくれれば、この虹を大きくして、お姫様に見せてあげるよ」
「えっ、本当が!それなら、なんでもおまえの言うとおりにするぞ!」
王様は若者に約束しました。
「では、これとこれを用意して、こうやって、こうして下さい。あとは王様も『ごにょごにょ・・です?』」
「ふむ、ふむ、なるほど、えっ〜ワシもか!」
王様は、ちょっと困った顔をしましたが、いったい何を頼まれたのでしょうか?
さて、王様は若者に言われたとおり、お姫様が寝ている部屋の前にある噴水広場にみんなを集めると、こう言いました。
「今から全員で水遊び大会をする。
ここにあるバケツと水鉄砲をつかって、いちばん水をがけて、はしゃいだ者が優勝じゃ!よいか〜
優勝した者にば金貨百枚じゃぞ〜、始め!」
金賃百枚と聞いて、家未も町の人も大入も子どもも、みんな大はりきりです。
最初はいやがっていった王様だって、水遊びは子どもの頃から大好きなんです、すぐに夢中になって大はしゃぎです。
噴水広場は、たちまち水びたしになって大きな喚声に包まれました。
この、とっても楽しそうな喚声に、病気で寝ているお姫様も外のようすが気にかかって仕方がありません。
とうとう起きだして、ニ階の窓からこっそり顔を出しました。
『えっ、これって水遊び!』でも、なんて楽しそうなんでしょう。
『あらっらっ』よく見ると王様もいるではありませんか。
お姫様は思わず微笑むと「王様!」と手を振っていました。
王様もそれに気がついて、手をいっぱい、いっ−ぱい、いっ−−ぱい振
って返しました。
久しぶりのお姫様の笑顔に王様の目も涙でにじんでいます.
その時です「虹よ、出てこい!」
大きな声で、若者が金魚鉢の水を空に向かってまきました。
すると、どうでしょう。
みんなのいる噴水広場からお姫様のところまで、まるで魔法でも見ているかのように
『サアーッ』と虹がかかりました。
「うわぁ〜きれい」
「お姫様から虹が出てる」
みんながお姫様に気がつきました.
すると不思議です、虹でつながったみんなから七色に輝く元気がやってきて、お姫様はたちまち元気一杯になりました。
それどころか、元気になりすぎて、小さい頃のおてんばお姫様に戻ってしまったようです。
だって、虹をつかむといきなり
「それっ〜行くわよ!」と、虹をすぺり台にして、みんなのところへ飛んでいってしまったんですもの。
ちょっと、おてんばで心配だけど、メデタシ、愛でたしですね。
作…2001年8月