「…ん、わかったもう帰るよ」
ぼくはちょっぴり不満のトーンを残して、
おじいちゃんとさよならして別れた。
そして、おじいちゃんが帰るのを確かめて、
校門のところにかくしたドロダンゴを持って
砂場に向かった。まだ、洋ちゃんと拓ちゃん
がいて、さっそくさっきの続きを始めた。
「ぜったい、ぼくのドロダンゴが一番強いよ」
そう言って、立ち上がった瞬間、うす暗い中
で大きな人影が叫んだ。
「健太、どうして、約束を守らないんだ!
もう、暗いから帰りなさいって、さっきあれ
ほどちゃんと約束したじゃないか」
『ゲッ』そこには、帰ったはずのおじいちゃ
んが仁王さまみたいな顔して立っていた。
いつもなら、ささっさっとうまい言い訳が、
言えるんだけど、この時ばかりはあわてて
しまって、ちっとも出てこなかった。
口もしどろもどろで声にならなかった。
それを、いいことにおじいちゃんはみんな
まで呼ぴつけて怒った。
「さっき、放送で四時半になったから、帰り
ましょうって言ってたじやないか。上級生は
ちゃんと帰ったのにこんなに暗くなるまで何
んで遊んでるんだ、はやく帰りなさい」
みんなは逃げ出すように帰っていった、な
んだかぼくはとってもバツが悪かった。
それでも、おじいちゃんは一人残ったぼく
にまだまだ怒るんで、ぼくは泣きたくなって
きちゃってとうとう泣いちやった。
「健太、泣いたって、だめだぞ!おじいちゃ
んは約束を守らないような奴は許さない、家
にだって入れて貰えないようにするから、ず
っとそこで遊んでなさい」
今日はとことん叱ってやろうと決めた。
健太は、私の娘の子で外孫である。
もう小学校二年生になるが、近くに住んで
いる娘夫婦が共働きなので、生まれた時から
面倒を見ている。
今日だって、いつものように学校帰りのラ
ンドセルが重いだろうと迎えに行くと
『まだ遊びたい』というので娘の家までラン
ドセルを持って帰り、いい加減暗くなったの
でもう一度様子を見に来たところなのである。
しばらくは遊ぶのを見ていたが、学校のお
帰りの放送があっても、先生に叱られた上級
生が帰っても、見つからないことをいいこと
に夢中で遊んでいるのである。
とうとう、しびれを切らして
『砂遊びをやめて帰りなさい』
と勧告し、手まで洗わせて約束したのである。
だけど、帰り際の様子がどうもおかしいので、
帰った振りをしたらこの様である。
いくら一番下の孫で、目に入れても痛くな
いくらい可愛がっている健太でも、曲がった
子にはしたくなかった。
でも、ちょっと力が入り過ぎてしまったよ
うである。
「おじいちゃんなんか大嫌いだ!」
ぼくは泣きながら、いつまでも怒っている
おじいちゃんにいった。
こうして、ぼくとおじいちゃんの中は悪く
なり、次の日からおじいちやんは迎えにこな
くなった
何日かたっても、まだ仲直りが出来ないで
困っていたら、学校のお勉強で手紙を書くこ
とになった。そこで、ぼくはおじいちゃんに
手紙を書くことにした。
…『後悔、先に立たず』あれから、健太とろ
くに口も聞いていない私は、娘に電話をした
り、おばあさんに健太の様子を聞いたりして
いるのだが、どうもばつが悪く、大好きな孫
に嫌われてしまったと悔やんでいた。
そんな時、健太から手紙が届いた。
『ぼくはおじいちゃんがだいすきです。いっ
もぼくのめんどうをみてくれる、いいおじい
ちゃんです』
とかわいい字が並んでおり、私は嬉しくて
何回も読んだ。おまけに、書き直したところ
の下に鉛筆の跡が薄く残っていて
『このあいだは、やくそくをやぶってごめん
なさい』と書かれていたので、私は思わず、
にんまりと徴笑んでしまった。
「エヘヘッ(^-^)、こうして、ぼくとおじいちゃんは
たちまちもとの仲良しにもどったてわけさ🎶」
作…1998年、秋
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