ノンちゃんとカナちゃんは、とっても元気のよい、ふたご
のなかよし姉妹です。
今日は、学校が早く終わったので、お母さんと公園をお散
歩です。お池のそばまでくると
「おかあさん、わたしたち、お池を反対まわりで冒険してくるね♪」
ノンちゃんとカナちゃんは、お母さんに手をふって走りだ
しました。
お池までくると、アヒルさんが「クワックワッ」と鳴いて
います。
ノンちゃんとカナちゃんは、アヒルさんが近づいてくるよう
に「クワックワッ」と、何回も鳴きまねをしました。
でも、アヒルさんはそんな声にしらんぷりで、反対の方
へいってしまいました。
「あ〜あっ、アヒルさんたち、向こうにいっちゃった」
ノンちゃんとカナちゃんは、がっかりです。
そんなときです、小さな橋の上でおじさんとすれ違ったの
で、大きな声で「こんにちは」とあいさつしました。
すると、すれ違った、おじさんの方から

「クワックワッ」と、アヒルさんの鳴き声がします。
『あれっ・・・』
ふたりは、あわてて振り返りましたが、でも、どこにもア
ヒルさんはいませんでした。
『アヒルさんがいないのに、どうして鳴き声が聞こえたのかし
ら〜』
ノンちゃんとカナちゃんは、不思議そうに顔をみあわせました。
「ねえ、カナちゃん、もしかして、今のはあのおじさんがア
ヒルさんの鳴きまねをしたんじゃない」
「じゃあ、わたしたちがもう一回アヒルさんのまねをしたらわ
かるんじゃない、たしかめてみようノンちゃん」
ふたりの大きな声の相談がおわると、おじさんの歩いていく
方へむかつて「クワックワッ」と、かわいい声で鳴きました。
・・・すると、おじさんの方から「クワックワッ」と、いう声
が聞こえます。
「やっぱり、あのおじさんなんだ〜」
ノンちゃんとカナちゃんは、なんだかとっても嬉しくなりま
した。
そして、こんどは、お池の反対から「クワックワッ」と
大きな声でさけびました。すると、向こうからも大きな声で
「クワックワッ」と、返事がかえってきます。
こんどはおじさんが見えるところで手を振って
「クワックワッ」て言うと、おじさんも手を振ってくれます。
ノンちゃんとカナちゃんは、嬉しくて嬉しくて、とうとう、お池を
まわっているあいだ、ずっと「クワックワッ」と言いつづけま
した。
そして、お母さん会うと、さっそく
「ねえ、ねえ、お母さん聞いていたでしょ!あのおじさんね〜私たち
がアヒルさんのなきまねをすると、かならず『クワックワッ』
て、お返事してくれるんだよ」
「聞いていたわよ、とってもやさしいおじさんで良かったわね」
と、お母さんが言うと
「うん、とってもやさしいから、お返事してくれるんだよね」
と、カナちゃんも言いました。すると、ノンちゃんが
「じゃあ、うちのお父さんもやさしいから『クワックワッ』
て言ったら、お返事してくれるはずだよね・・・」
ノンちゃんとカナちゃんは相談して、さっそく、たしか
めてみることに決めました。
そう決めると、お父さんの帰ってくるのが、まちどおし
くてなりません。公園から家に帰って、ようやく夕方から夜
になり、お父さんの帰ってくる時間になりました。
・・ピンポーン・・
お父さんが帰ってきました。
ノンちゃんとカナちゃんは、ちょっぴりドキドキして玄関
にいくと、たずねるような声で「クワックワッ」と言いました。
すると、お父さんは大きな両手でノンちゃんとカナちゃん
を抱き上げると、ふたりを見つめながら、やさしい声で
「クワックワッ」と応えました。
『やったー』ふたりは大喜びです。
だってねやさしいお父さんがね、本当にやさしいとわかっ
たんですもの。お母さんにも、おおいそぎで報告です。
「お母さん、お母さん、お父さんがクワックワッて、言
ったよ、クワックワッて」
それを聞いていた、お母さんはお父さんの方へ向かって、
ニッコリ笑ってウインクです。お父さんもお母さんの方
にむかってニッコリ、ウインクです。
でも、どうしてお父さんが『クワックワッ』のことを知っていたのか、不思議でしょ?
それはね、ここだけの秘密なんだけど、お母さんがお散歩から帰ったあと、お父さんの会社に電話して
「クワックワッ」て、お話しをしたからですよ。
作 …2000年、夏